ベドキアン社「ニュースレター:再生由来カーボンで築くサステナブルな未来」

分子レベルまでサステナブルに

過去のコラムでも取り上げられているように、Z世代を中心に若い世代は引き続きサステナビリティを重視しています。Whole Foods Market社に代わってYouGovが実施した調査(18〜27歳の米国成人1,032 名を対象)によると、Z 世代の70%が気候に配慮したスマート農業を支持していることが明らかになりました。さらに、55%が環境に配慮したサステナブルな製品に対してより高い価格を支払う意思があると回答しています。
メディアFirst Insightが1,000人の消費者を対象に実施した調査によると、Z世代の62%がサステナブルブランドから購入することを好んでおり、その割合はミレニアル世代と同水準でした。
若い世代のサステナビリティへの関心は、単なる消費者としての行動にとどまりません。彼らの労働倫理や企業への期待にも浸透しています。例えば、Deloitte社が2024年に44か国・22,800人を対象に実施した「Z世代とミレニアル世代調査」では、回答者の大多数が「自分の勤務先は気候変動への対応に取り組んでいる」と認識していることが明らかになりました(Z世代で59%、ミレニアル世代で58%)。
NIQ社によると、Z世代の購買力は2030年までに12兆ドルへと拡大すると予測されています。若い世代の影響力はサプライチェーンを再構築しており、彼らはサステナビリテイが日常的なビジネスの一部であることを期待しています。サステナブルな製品やサービスに対する消費者需要は増加を続けており、購買習慣や購入意思決定に大きな影響を与えています。メーカーやブランドは現在最大の世代であるZ世代、そして新たに台頭するアルファ世代の需要に応えるため、サステナビリティへの取り組みを一層強化する必要があります。
サステナブルフレグランスの拡大

ブランド各社は消費者需要に応えるため、フレグランス/フレーバーのサプライヤーに依頼しサステナブルな製品の開発を進めています。
Free Yourself社によれば、グリーンケミストリーはフレグランス開発の中心的存在となりつつあり、ブランドは再生由来カーボンや環境負荷の少ない合成方法に注目しています。さらに、Coherent Market Insights社も同様の見解を示しており、ブランドが希少または調達が困難な天然原料の代替として、サステナブル素材や人工的に製造された代替品を用いてを新しい香りを創出しいます。
消費者がサステナブルな製品や取り組みをますます求める中、企業は今後も環境保全を優先し続けるでしょう。ベドキアン社の高インパクトでサステナブルなフレグランス/フレーバーは、パフューマーやフレーバリストの創造性を高め、エコフレンドリーな製品を求める消費者ニーズにも合致しています。
再生由来カーボン ― それは何か? なぜ重要なのか?

サプライヤーや原料のサステナビリティに関する側面の一つに、「製品がどのように作られているか」があります。再生由来カーボン(Renewable carbon)は植物やバイオマス、回収されたCO₂など、化石資源ではない生物由来の原料から得られます。石油や天然ガス由来のカーボンとは異なり、再生由来カーボンは自然のカーボン循環の一部です。化学的構造は化石由来でも再生由来でも同じですが、カーボンの「由来」が素材の環境負荷に大きく影響します。
再生由来カーボンが重要な理由はいくつかあります。
1. 気候に対する責任
再生由来原料を使用することで化石資源への依存を減らし、製品全体のカーボンフットプリントを低減できます。これにより製品開発を気候変動の主要な要因となる石油や天然ガスの採掘・消費から切り離すことができます。
2. 循環性と持続可能性
再生由来カーボンは地球から永久に失われるのではなく、再生由来なシステムを循環するカーボンを利用することで、循環型経済への移行を支えます。このアプローチは化学産業における長期的な持続可能性を促進します。
3. 消費者とブランド戦略
グローバルブランドやメーカーは自社のサステナビリティ目標に合致する原料の調達にますます注力しています。再生由来カーボン含有率の高い原料を提供することはこうした企業がカーボン削減や環境への取り組みにおいて、測定可能な進捗を達成する助けとなります。
4. 規制面および市場での優位性
多くのフレグランス/フレーバー企業はサステナビリティ施策の報告のために、自社ポートフォリオ全体で再生が由来な原料の含有率を見直しています。再生由来カーボンの割合が高い原料を提供することはクライアントに競争上の優位性をもたらし、企業の環境報告基準への対応も支援します。
サステナビリティへの取り組み

ベドキアン社はサステナビリティに真摯に取り組んでいます。同社ウェブサイトには「サステナブル原料」のページがあり、再生由来カーボンを使用した原料を紹介しています。サステナブルな原料を簡単に確認できる環境を作ることで、お客様の求めている原料をよりサステナブルなものに置き換えるツールとしてご利用ください。
ベドキアン社は主要原料の再処方を通じてカーボンフットプリントの削減を継続的に進めています。この秋、再生由来カーボンを使用した「SUS」指定の原料として、同社の代表的な原料11製品を再リリースすることとなりました。本ニュースレターではそのサステナブル原料のうち以下の 2 つを取り上げます:
尚、サステナブル原料の全リストについては下記表をご確認ください。
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原料名 |
原料説明・再生由来カーボン割合 |
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青々しく甘い、バターのような、フルーティーでイチゴやリンゴを思わせる香り。風味はスイートグリーンで乳製品のようなノート。再生由来カーボン 85%。 |
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青々しくフルーティー、刈りたての草やリンゴのような香り。風味はフレッシュでグリーン、フルーティーなノート。再生由来カーボン85%。 |
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フルーティーでグリーン、洋ナシのような香りに野菜系のノート。風味は甘いグリーン、ハーブ、クリーミーで、バートレットペア(洋ナシ)のニュアンス。再生由来カーボン88%。 |
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強いエーテル系で甘いグリーンアップルの香り、ウッディな余韻。風味はグリーンで新鮮な野菜、ややフルーティー。再生由来カーボン64%。 |
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フローラルでオリスの香りにキュウリのほのかなニュアンス。風味はメロンとキュウリ、熟したイチゴのような下支え。再生由来カーボン50%。 |
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希釈すると力強いスミレの葉とキュウリの香り、わずかなメロンのニュアンス。風味はグリーン、キュウリ、メロン、脂肪感があり、高希釈で非常にナチュラル。再生由来カーボン50%。 |
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グリーンでメロンの香りに、水っぽいキュウリのノート。風味はグリーン、キュウリ、メロンにスイカのほのかなニュアンス。再生由来カーボン50%。 |
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非常に力強くクリーミーでグリーンな抹茶の香り。風味はシャープでグリーン、ミルキーでヘビークリームのよう、紅茶のニュアンスも感じられる。再生由来カーボン64%。 |
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力強くフレッシュなシトラスとスイカの香り。風味はフレッシュなグリーンメロンで、特にスイカの特徴が際立つ。再生由来カーボン50%。 |
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柔らかいジャスミンやホワイトフローラルの香りにクリーミーなラクトンノート。風味はクリーミーでジャスミンとピーチ。再生由来カーボン86%。 |
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エーテル系のフルーティーな香りに、うま味のあるバックノート。風味は甘くエーテル調でラムを思わせる。再生由来カーボン71%。 |
LACTONE OF CIS JASMONE™ (BRI #411-SUS)

オリジナルのBRI#411はベドキアン社が最初に発売した製品のひとつで、現在でも非常に人気があります。1973年に発売された有名な香水「Charlie by Revlon」にも使用されました。BRI#411-SUS は、再生由来カーボンを86%含む多用途なフレグランス/フレーバー原料です。フレグランス面ではソフトでありながら洗練されたジャスミンアブソリュートの香りを際立たせ、ホワイトフローラルの香りとクリーミーなラクトンノートを提供します。また、ココナッツやトロピカルなアコードも表現できます。フレーバー面ではクリーミーなジャスミンやピーチの香味を特徴としています。クリーム系フレーバーに使用でき、ピーチやココナッツの用途にも最適です。さらにはジャスミンティーフレーバーに豊かなジャスミンノートを加えることもできます。
e,z-2,6-NONADIENAL FCC (BRI #332-SUS)
オリジナルのBRI#332はフレグランスにもフレーバーにも幅広く使用されているベドキアン社の代表的な製品の一つです。BRI#332-SUSは再生由来カーボン50%を含む持続可能な成分で、フレグランス/フレーバー両用途にも使用できる製品です。フレグランス面ではナチュラルなグリーンさ、葉っぽさ、みずみずしさ、フローラルノートなどを強化するのに適しています。フレーバー面ではナチュラルなグリーンさ、キュウリ、メロン、フローラルノートを引き立てます。また、メロンやイチゴなどのフルーツフレーバーだけでなく、キュウリ、セイボリー、オイスター、他シーフードフレーバーなどにも適しています。
ベドキアン社のサステナブルで高いインパクトを持つフレグランス/フレーバー製品は、化石由来の原料と同等の性能と嗅覚品質を維持しつつ、よりサステナブルなプロファイルを提供します。再生由来カーボン由来の原料を配合に組み込むことで、お客様はScope 3の温室効果ガス排出量を削減し、サステナビリティに関する主張や企業の社会的責任レポートの改善、また責任ある調達とイノベーションに焦点を当てたブランドストーリーを強化できます。消費者は品質・香り・性能において理想のストーリーを構築でき、自分たちが使う製品が環境への影響を低減していることを実感できます。
サステナビリティへの取り組み
ベドキアン社は製品の性能や創造性を維持しながら、化石由来カーボンをサステナブルな原料に置き換えることに取り組んでいます。この取り組みによりフレーバー/フレグランス業界はよりサステナブルで循環型のカーボン経済へと移行することが可能になります。
FUN FACT

2023年、Gucciの「Where My Heart Beats」は工場から排出される炭素を100%回収し原料としたアルコールが使われた世界初のグローバル流通の高級フレグランスです。これはCotyとLanzaTechの提携により産業廃棄物をエタノールに変換することで実現されたもので、再生由来カーボンの活用の一例です。