ベドキアン社「ニュースレター:インスピレーションの材料」

FOODIE FRAGRANCES(美食家向けのフレグランス)

フレグランスは常にフレーバーの重要な要素でしたが、近年ではフレーバーがフレグランスの要素としても注目されるようになり、市場では食べ物にインスパイアされた香りが急増しています。

グルマン(Gourmand)は「食欲をそそる中毒性のある香りで、食べられそうな匂いがするもの」と定義されており、その人気はますます高まっています。グルマン系の香りは通常バニラ、チョコレート、コーヒーなどの甘いスイーツやデザートと関連付けられ、フルーツと組み合わされることも多いです。しかし、最近ではその定義が拡大し、ハーブ、スパイス、フライドチキン、飲料などのセイボリー(塩気のある)食品からもインスピレーションを得た新しい「FOODIE FRAGRANCES(美食家向けのフレグランス)」が登場しています。

最新のラベル「ネオ・グルマン(neo-gourmands)」は、「食べ物の香りをアート的な次元に昇華させる実験的で風変わりな香り」を指します。メディア「Highsnobiety 」のビューティーエディターであるアレクサンドラ・ポーリー氏によると「今後、キャラメルやブラウンシュガーのような甘いデザート感があるグルマン系の香りから、抹茶やミントのような塩味の効いた香りへのシフトが見られるようになるでしょう」とトレンドの流れを予想しています。

伝統的なグルマンからネオ・グルマンまで、Bedoukian社 の高インパクトなフレグランスおよびフレーバー成分はパフューマーとフレーバリストの両方にとって最高の選択肢を提供します。


食欲をそそるいい香り

1992年にThierry Mugler社は「Angel」を発売し、現代的なグルマン系フレグランスの最初の例とされています。Angelはチョコレート、キャラメル、バニラ、ハチミツ、プラリネ、コットンキャンディなど、さまざまな甘く温かいフルーティーなノートを特徴としています。それ以来グルマン系の香りは増え続け、前回のニュースレター「季節限定の香りとフレーバー」でも言及されています。

また、Spate社によると、グルマン系フレグランスの検索数は年間33.9%増加すると予測されています。そのカテゴリーの中でも特にキャラメルの香水は42%以上の急増が見込まれており、他にもマシュマロの香水やバニラの香水がトレンドになると予測されています。

高級フレグランスにおけるグルマン系の香りが注目を集める中、有名な食品・飲料ブランドもコラボレーションブームに乗り、パーソナルケアやホームフレグランスの分野へ参入しています。

Azha Perfumes社は香水「Baklava」を発売しました。中東の古いベーカリーの素朴な魅力にインスパイアされたこの香りは、甘いハチミツ、ローズウォーター、バニラ、焦がし砂糖が溶け合い、さらにカルダモン、ローストしたピスタチオ、クルミ、そしてかすかなシトラスの温かくスパイシーなノートが絡み合っています。また、ジュエリーとファッションアクセサリーの小売ブランドClaire’s社は、グルマン系の香りをテーマにした5種類の香水を発売しました:「Caramel Brulée」、「Caramel Pistachio Brittle」、「Strawberry Colada」、「Strawberry Pistachio Crumble」、「Toasted Coconut Macaron」。これらは単独で楽しむことも、重ね付け、ブレンドしても楽しめます。

グルマン系のパーソナルケア製品において、多くのコラボレーションが展開されています。Native社はDunkin Donuts社の人気ドーナツフレーバー4種類にインスパイアされた新しいコラボ商品を発売しました。「Native × Dunkin’」コレクションとして、以下の香りが登場し、Walmart限定で販売されています:「Boston Kreme」、「Blueberry Cobbler」、「Strawberry Frosted」、「Vanilla Sprinkle」。また、Native社はJarritos社とも同様のコラボレーションを実施し、「Native × Jarritos」ラインとしてメキシコの伝統的なフレーバーを取り入れた商品をTarget限定で販売しています:「Mandarin」、「Passion Fruit」、「Pineapple」、「Watermelon」。どのコレクションもデオドラント、ボディウォッシュ、ハンド&ボディローション、シャンプー、コンディショナーといった幅広い商品展開をしています。

Dove社は人気クッキー販売店のCrumbl社と提携し、ボディウォッシュ、ボディスクラブ、デオドラント、リキッドハンドウォッシュのラインナップを展開しました。Crumbl社のクッキーをイメージしたコンフェッティケーキ、レモングレーズ、ストロベリークラムケーキの3つの香りが登場し、さらに同社のシグネチャーピンクボックスにちなんで、Dove社は初めてパッケージカラーをピンクに変更しました。

グルマン系の香りは長らくキャンドルで人気を博しています。最近の例として、Bath & Body Works社の「Sweetheart Cherry」があり、ワイルドチェリー、砕いたピスタチオ、ホイップバニラの香りが特徴です。また、「Perfect in Pink」はチェリー、ピンクカメリア、ホイップアーモンドクリームの香りを組み合わせています。

Goose Creek社は食品や飲料ブランドと提携し、彼らのクラシックなフレーバーをキャンドルの香りに変えました。また最近M&M社ともコラボし「Milf Chocolate M&M'S」、「Holiday Mint M&M'S」、「Peanut M&M'S」など、9種類のフレーバーが登場しています。

昨年の秋、Joya Studios社はA24社と提携し、ホラー映画『Heretic』の上映にブルーベリーパイの香りを取り入れた没入型の映画体験を提供しました。このコラボレーションの一環として、Joya社は「A24 x Joya "Heretic"」というブルーベリーパイのキャンドルを作成しました。

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#614はフレーバー成分として新鮮なイチゴを思わせる甘くフルーティーなニュアンスがあり、さまざまなフルーツフレーバーに甘いノートを加えるために使用できます。香料の処方において、#614はパイナップルやベリーのノートを持つ強力なグリーンフルーティーな香りを持ち、特にベリーやイチゴタイプのフルーツやフローラルのトップノートを強調するのに適しています。また、この製品にはIFRAガイドラインが適用されます。



セイボリー(塩味)系の香りが注目

スパイスやフライドチキンからアジアのフレーバーまでセイボリー系の食品は香りのインスピレーションの源となっています。例えば、Hellmann社とアメリカンフットボールチーム「Tennessee Titans」のクォーターバックであるウィル・レビス氏は期間限定の「Will Levis No. 8」というマヨネーズにインスパイアされた香水を発表しました。爽やかなレモン、コーヒー、ムスク、バニラ、そしてマヨネーズのアコードが調和したユニークなブレンドとなっています。また、Auntie Anne’s社はその特徴的なプレッツェルの香りを香水に落とし込み、「Knead: Eau De Pretzel」として展開しました。バターの効いた生地、塩、そしてほのかなキャラメルの甘さが香り立つ一品です。さらに、英国のケンタッキーフライドチキン(KFC) 社は期間限定で「No. 11 Eau de BBQ」という香水を発売しました。バーベキューの魅力的な香りを再現し、スモーキーでウッディなノートに炭のニュアンスが加わり、トップノートではKFC秘伝の11種類のハーブ&スパイスを模した香りが楽しめます。

d'Annam社やElorea社などのブランドはアジア文化にインスパイアされたオードパルファムを展開しています。d'Annam社の「Pho Breakfast」はベトナムの国民食である牛肉フォーから着想を得ています。この香りはフォーの主要な食材を取り入れ、スパイスブレンドの温かみを感じさせながら、バジルやシラントロなどのフレッシュハーブのニュアンスを織り交ぜています。Elorea社の「Jang」は韓国料理の基盤となる伝統的な発酵ソースに敬意を表した香りです。力強い大豆や熟成醤油(ジンジャン)、チャコールの香りが特徴で、ジャスミンやイランイランの甘く包み込む香りと調和し、さらに粘土製の壺を思わせる深みのあるアーシーな余韻が漂います。

高級フレグランスに加えて、有名な食品・飲料ブランドがホームフレグランスブランドと提携し、人気のフレーバーを再現した期間限定の香り付き商品を展開しています。KFC社はHomesick Candles社とコラボし、「Bucket Of Chicken Air Freshener and Candle」や 「Buttery Biscuit Candle」を発売しました。また、Campbell社はCamp社と提携し、「Scents of Sides Season」という期間限定のキャンドルコレクションを展開しました。「Apple」、「Fennel & Herb Stuffing」、「Everything Bagel-Seasoned Mashed Potatoes,」、「Green Bean Casserole」、「Jalapeno Cheddar Mac & Cheese」などホリデーシーズンの定番料理の香りが揃っています。

ハーブや野菜も香りのインスピレーション材料になっています。ホリデーシーズンに向けて、Chipotle社は「All I Want is Chipotle」セットを発売しました。このセットにはパクチーソープ、レモネードの香りがするウォーターカップキャンドル、そしてヴィーガンカクタスレザー(サボテン革)製のカーナプキンホルダーが含まれています。また、Malin+Goetz社はアルコールフリーの 「Tomato Home Spray」を発表しました。サンマルツァーノトマトの葉から抽出した香りに、ハーブや熟したトマトの香りをブレンドし、さらに消臭効果を付与した特殊なスプレーになります。こうしたセイボリー系の香りやブランドコラボ は、消費者の注目を集め、体験として楽しめる商品となっています。

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#809-SUSは持続可能でフレグランスにもフレーバーにも使用できる製品になります。フレグランス用途では力強く拡散性の高いグリーン、ガルバナム、ペッパーの香りを持ち、さまざまな香りのタイプに自然なアクセントと奥行きを加えます。フレーバー用途ではピーマンや青唐辛子などの青々しい野菜の風味を増幅させ、幅広いフレーバーに活用できます。



香りを味わう

セイボリー系の食べ物だけではなく、抹茶、珈琲、アルコールなどの飲料も香りのトレンドに影響を与えています。Spate社によると「抹茶の香水」に関するGoogleの月間平均検索数は1,600件で、127.4%YoYの成長を記録しています。TikTokでは抹茶の香水トレンドが週平均26,100回視聴され、8.6/10の高い好感度スコアを誇っています。また、自身の人気曲「Espresso」にちなんで、サブリナ・カーペンター氏は新たに「Me Espresso」を自身のフレグランスポートフォリオに追加しました。この香水にはエスプレッソビーンズ、ココアパウダー、バニラオーキッド、ビスコッティなどの香りがブレンドされています。さらに、Dolce & Gabbana社の新作「Devotion For Men EDP」はコーヒー、イタリアンレモン、パチョリの香りを融合させたウッディでスパイシーなフレグランスです。

ビール、ウイスキー、テキーラなどのアルコール飲料もフレグランスのトレンドとして登場しています。Miller Life社は限定キャンドルコレクション「Bar Smells」に続き、限定フレグランス「Dive Bar-Fume」を発売しました。この香りはお気に入りのダイブバーの雰囲気を再現し、シダーウッド、パチョリ、タバコ、レザーなどのノートをブレンドしています。また、d'Annam社は「Japanese Whiskey Eau de Parfum」を公開し、ウイスキー、ミズナラオーク、モルトバーレイ、クラリセージ、サンダルウッド、チェスナットの香りが調和したフレグランスになっています。さらに、Maison Solís社はアガベをテーマにしたニッチフレグランスライン「Añejo」、「Blanco」、「Reposado」の3種類を展開しています。


一口かじる

グルマン系フレグランスは進化を続け、甘さだけでなくセイボリー系の方向にも広がりを見せています。食品や飲料からのインスピレーションは無限大です。消費者は常に新しい成分、香り、コラボレーションを求めているのです。


FUN FACTS

中世ドイツではジンジャーブレッドクッキーは通常、首にかけられ、甘くスパイシーな香りを放つ「着用できる香水」として使われていました。キャビアやベーコンといった塩味がある食品はもちろん、ガソリンや火薬、人間の分泌物のような奇抜な成分からも香りのインスピレーションを得ることがあります。香水のインスピレーションと成分は、香水師の想像力の幅によっても異なります。1998年、バラがディスカバリー宇宙シャトルに持ち込まれ、重力がその香りに与える影響の研究が行われました。その結果スペースローズが生まれ、その成分は「フローラルでウッディ、そして神秘的な香り」を持っていることがわかり、後に近未来的なボトルとともに香水に取り入れられました。