ベドキアン社「ニュースレター:ノスタルジア2.0、ニュースタルジア(NEWSTALGIA)」


過去と未来を見比べて

ニュースタルジアとはニュー(新)とノスタルジアを合わせた造語で2009年にシアトル・DJ・ショーン・デ・トレによって作られ、ファッションと音楽の融合を表現しました。

15年が経った現在、ニュースタルジアは新たな市場として確率しています。
例えば、2022年にニュースタルジアはヴィンテージとコンテンポラリーなデザイン要素を組み合わせたインテリアデザインやファッションカを指す言葉として広まりました。また2024年にはAdobeにより「ヴィンテージスタイルの現代的解釈」であると毎年発表しているAdobeクリエイティブトレンド4の一つとして選出されました。そして現在、ニュースタルジアは香料業界にもブームを巻き起こしつつあります。

2022年に配信したベドキアン社「ニュースレター:ノスタルジア」で述べられているように、消費者はフレーバーやフレグランスに感情的なつながりを持っています。飲食業界でニュースタルジアとは、思いで深い味や香りを新しい技術や素材、形式と組み合わせることで彷彿とさせることを意味します。この新旧の組み合わせは次世代に斬新な体験をもたらすと期待されています。

 


懐かしの味を現代風にアップデート

コンフォートフード(馴染みのある味や食感、あるいは流行り廃りのない料理で、定番や懐かしいと認識されるものを指す)は消費者にとって身近な存在であり続けています。
Mintel社のデータによると米国の消費者の38%が子供の頃を思い出させるフレーバーを好むといいます。そして今、消費者は現代風にアレンジされたコンフォートフードを求めています。GrubHub社によるとレストランは伝統的なコンフォートフードをモダンにアレンジして提供しており、レストラン経営者の65%がこの傾向は続くと予想しています。ハイブリッドとマッシュアップがこの領域で進化していく様子に注目です。
例えば、クラフト・シングルズとシャーリー・チョン(トップシェフファイナリスト)は、トマトスープと焼きチーズ餃子を融合させたチャイニーズ・アメリカンな「クラフト・シングルズ・スープリングス」を開発しました。

Pinterest Predicts 2024では非常に意外な食べ物の組み合わせの検索が人気であることが明らかになりました。Pinterestでは「メルティ・マッシュアップス(Melty Mashups)」がこのトレンドに入っており、「ハンバーガーのケサディーヤ」や「ピザのポットパイ」等のようなとろとろで食欲をそそるようなマッシュアップを作るのがブームになっています。日本では2023年夏、Burger Kingが期間限定でシュリンプ・ワッパーを提供し、ガーリックシュリンプとビーフパティの組み合わせから「サーフ&ターフ」と表現されました。また、米国では2023年に最もグーグル検索されたレシピの第2位にLasagnasoup(ラザニアとスープのマッシュアップ)がランクインしました。

甘味部門ではMondelēz International社の提唱する「The Retro Revival Lives On」、レトロな食材や料理、特にデザートにおいて新しい方法で昇華され現代風にアレンジされることがトレンドとなりました。例えば、Last CrumbとFly By Jingがコラボしたホリデー限定コレクションは、甘いクッキーにFly By Jingのチリ・クリスプ調味料からインスピレーションを得た四川風の大胆な辛さを取り入れています。このコレクションでは、フランス産ダークチョコレートとオレンジピールを組み合わせた「Enter The Dragon Cookie」をはじめ、Fly By Jingの「Xtra Spicy Chili Crisp」など9種類のクッキーが紹介されました。NatureのPremium Fruit Pearlsは子供たちに人気のフローズンデザートをアレンジしたもので、使用されているパールはフルーツとクリーミーなヨーグルトを冷凍ミックスしたものです。デザートのレシピではクリーミーでフレッシュなクラシックチーズケーキをサクサクとした甘い中東のデザートと組み合わせることで、さまざまな予想外の味と食感を生み出しているバクラヴァ・チーズケーキ(Baklava cheesecake)が勢いを増しています。
BRI#728 Nuezate™ 

BRI#728はフレーバーとフレグランスの両方に使用できる香料です(国によって規制は異なる)。フレーバーでは様々な木の実の典型的な土の香りを押し出し、キャラメル、チョコレート、チュロス、スモアといった甘いローストの香りとよく合います。フレッシュで特徴的なブラックウォールナッツのアロマに、ウッディなアンダートーンとほのかなフルーティさを加えたBRI#728は、フレグランス用途に複雑さと深みを加え、グルマン系の香りのポップとしても使えます。


時を遡る一杯

マティーニが2021年以降トレンドとなっています。フード&ワイン記事編集者によると、2023年、消費者はノスタルジアトレンドに触発されたことによりクラシックな飲み物に注目が集まり、甘いものからしょっぱいものまで何でも合うマティーニに目をつけたとのことです。エスプレッソ・マティーニなどのフレーバー・ツイストは安定しており、Glimpse社によると、中でもエスプレッソ・マルティニへの関心は2023年10月現在、月に14万8000回検索され、過去1年間で前年比25%増加したとの報告があります。

Bacardiの2024年カクテルトレンドレポートによると、トレンドの一つである「Escapism Elixirs」が今後さらに注目されると発表しており、「クラシックなスプリッツなどのカクテル文化は国境、さらには時代を超えて消費者に一年中ノスタルジックで和やかなひとときを再現するのに役立っている」と述べています。デンマークのコペンハーゲンにてPepsicoはEmpiricalとコラボし、「Empirical x Doritos Nacho Cheese」のアルコール飲料を発表しました。

 


90年代の香りとボディスプレーのブーム復活

ファッションやビューティ、フレグランス分野で90年代に流行したアイテムが注目を集めています。当時、若者に人気だったボディスプレーやバニラの香りは甘さやくどさを抑え、より洗練されたものにアップグレードしました。また、ラグジュアリーブランドやニッチブランドが、新しい解釈のボディスプレーを発売しています。例えばPhlurはAmber Haze、Mango Mood、Vanilla Skinのボディミストと「鮮やかなオレンジピールとドラゴンフルーツの果肉がはじけるフルーツグミのノスタルジックな甘さで始まり、マリーゴールドとオレンジフラワーの陽光が夢のような雰囲気を添えるフルーティフローラルな香り」が味わえるMood Ring EDPを発売しました。Circanaによるとプレステージフレグランスボディミストの売上は米国で2023年上半期に185%伸び、さらにSpate社によるとボディスプレーへの世間の関心は急上昇し、毎月平均91,400件が検索され、2022年と比較して9.8%の伸びを示しました。

バニラは暖かく、心地の良い香りとしてフレーバーやフレグランスの原料として愛されています。Spate社スペイトによると、バニラを含むGoogle検索は現在月平均138.6万件で、前年比22.1%増えているというデータがあります(あらゆるフレグランスノートで最も大きなプラス変化)。TikTokのハッシュタグ「#vanillaperfume」は週平均440万ビューを集めているほどです。Tom Fordの最新作「Private Blend Vanilla Sex」は、「グラマラスな輝きと魅惑的な深みを生み出す3つのバニラノートが融合している。最初のバニラCO2エキスが舞台を整え、ブランド独自のバニラティンクチャー・インディア(この香りのために特別に作られた)が感覚を柔らかく包み込む。最後に、ダークなバニラ・アブソリュートがコントラストとなり、経験を深めてくれる」香りになります。ボディスプレーとバニラの香りのブーム復活は現代の若者向けにアレンジされ、現代化されたニュースタルジアの表れなのです。

BRI #830 VANILLIN PROPYLENE GLYCOL ACETAL

BRI#830はアロマティックで甘く、スパイシーな香りを持つ、強烈なバニラのアロマのニュアンスを持ちます。バニリンを補うために使用されるBRI#830はアルカリ環境で安定し、変色を抑えることができ、キャンドルや石鹸に最適です。フレーバー分野においてはスモーキーなバニラの香りを特徴とし、トーストしたマシュマロやチョコレート・ファッジのような様々なノスタルジックな風味を演出することに適しています。

ノスタルジアの未来

フレーバーとフレグランスの世界では創造性は無限で、私たちは新しいものを探求しながらも、過去を活用することができます。馴染みのある香りと馴染みのない香りをミックスすることで、新しい可能性を消費者に届けることができるのです。Bedoukianのインパクトのあるアロマとフレーバーの分子は汎用性が高く、ニュースタルジーをテーマにした香りやフレーバーの処方を引き立てるのに是非お役立てください。